地方の人口減少対策における「関係人口」の必要性
こんにちは!カンタ〈@inabigi〉です。
みなさん!!
突然ですが、最近よく聞くようになった「関係人口」。
やたらとこの言葉を聞く機会が多いと思いますが、なぜ「関係人口」が必要だと思いますか?
僕は普段移住支援の仕事をしていることもあり
移住者を増やすには「関係人口」が必要
と考えています。
先日、僕が住む福井県南越前町にて「関係人口」をテーマに発表をする機会をもらいました。
やっと発表が終わったーーー!
— カンタ / 田舎暮らし広報担当 (@inabigi) 2019年3月9日
お偉いさん方々で少々緊張したけど、わかりやすかったと言ってもらえた✨
ここで繋がった方々もいて、田舎暮らしでこういう場に出るのもアリだと思った!
そしてもう忘れられているだろうけど、アンケート結果の記事をこれでやっと公開できそう(・∀・) pic.twitter.com/tXqnws1SSd
今回はその発表した内容を元になぜ「関係人口」が必要なのかを話していきます!
- 関係人口とは
- そもそも人口の現状ってどうなの?
- 移住してもらうには?
- 我が町(福井県南越前町)の「関係人口」への取組
- なぜその地域(福井県南越前町)に来てもらえるのか
- 人気移住地域との違い
- カンタが考える理想の移住の流れ
- まとめ
- さいごに
関係人口とは
まず「関係人口」なんて知らないよという方のために簡単に説明します。
総務省によると
「関係人口」とは?
「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。
では具体的にどんな人を指すのかというと
のような人が挙げられます。
つまり一言でいうと、「地域外に住みながら地域の手伝いをしてくれる人」です。
もっと正確に言うと
ふるさと納税をした人
都市部にある物産展で定期的に商品を買ってくれる
などのようにその地域を訪れたことがなくても「関係人口」と呼ばれることもあります。
ただ今回の記事内では、基本的に「その地域を訪問してくれた人」を指すということはあらかじめ念頭に置いてお読みください。
そもそも人口の現状ってどうなの?
次に関係人口の話をする前の共通認識として簡単に「人口」について整理しておきます。
当たり前のことではありますが、改めて書きます。
全国的には?
まずは日本全体ですが、総務省から発表されている未来も含めた人口の推移を見てみます。
出典元:総務省「第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」
見ればおわかり頂けると思いますが、全体の総人口も2005年を境に減っています。
そして14歳以下の人口は減り、65歳以上の人口は増えていきます。
つまりこれからは「人口減」と共に「高齢化」が進んでいくということです。
我が町福井県南越前町は?
では実際に1つの地方自治体の例として、僕が住む福井県南越前町の人口推移も見てみます。
「総人口」は減っています。
14歳以下は減り、65歳以上は増えています。
ということは、おそらくこういうことでしょう
ここでは福井県南越前町を例に挙げましたが、
単刀直入にいうとほとんどの全国の地方自治体は
もう今後人口は増えない
でしょう!!
では全体的な「人口」が増えない今、どうすればいいと思いますか?
これからするべきこと
このままでは人口が減ってしまう地域ではどうすればいいのか?
当たり前のことにはなりますが、僕は以下のようにするべきだと考えています。
そうです。
若い人口を増やす(≒維持する)ことに注力すべきなのです。
若い人口さえいれば地域内で維持されることも多いですし、多くの問題を解決することができるでしょう。
そのために
・これから出ていく人を引き留める
・Uターンしてもらう
・Iターンしてもらう
ということに着手していく必要があります。
移住してもらうには?
では、若い方々が移住をする理由はなんでしょうか?
いくつか挙げてみます。
このような理由の人が多いのではないかと思います。
ただ、移住者の最終的な移住の「決め手」って何でしょうか。
移住した「理由」をアンケートしているとこはいくつかあるのですが、どこも複数回答可能のやり方で行われており、最終的な移住の「決め手」がよくわかりませんでした。
そこで、今回は自分でSNSを使ってアンケートをしてみました。
移住の最終的な”決め手”アンケート
先日、こんな感じで呼びかけました。
🔆アンケートご協力のお願い(拡散希望)🔆
— カンタ / 田舎暮らし広報担当 (@inabigi) 2019年1月31日
都市部から地方に移住された方の
「移住した”決め手”」
を知りたいです💡
この結果は今度の僕の発表資料として使いますが、せっかくなので集計・検証結果をブログにも公開します!
みなさま、ご回答よろしくお願いします✨https://t.co/2PLG5bKSnt
もう本当にありがたいことに122件の回答を集めることができました!
改めてご協力ありがとうございました!!
そんな今回のアンケートした内容はこちら。
詳しくは「移住者に聞く!移住の最終的な決め手・決断理由は? - いなビギ!」にまとめてますので、もしよければご覧ください。
ここでは簡単に紹介します。
まずは移住した「理由」。
結婚や仕事の都合など、選択の余地がない理由が多くを占めています。
また回答が多いものをジャンル分けしてみると「人・環境」、「自然・食材」、「制度」といったものが多いです
それを踏まえて、最終的な移住の「決め手」について見てみます。
移住した「理由」と比べると上位に来ているものが、結構変わりましたね。
つまり、ここで回答の割合が減った項目は移住を決める判断材料として、優先順位が低いということです。
実際に減った項目を見てみると「自然・食材」、「制度」が減っていますね。
その反面、「地域の人柄」、「移住支援・相談してくれる人が良かった」などの『人』は減っていません。
また同様に「やりたいこと(夢)を実現できる地域」、「自分の知識・スキルを活かせる」などの『環境』も減っていません。
つまり
ということがわかります。
移住の最終的な「決め手」は
「あの人がいるから安心」
「あの地域の人柄なら行ってからも馴染めそう」
「同じ志をもった人がいる」
「自分の夢だったカフェができる」
というような『人・環境』によるものが多いということです。
しかし
その地域の人柄を知る、やりたいことが実現できるなどは、現地に行ってはじめてわかることなんです。
だからこそ移住者を増やすためには「関係人口」を増やすことが必要なのです。
我が町(福井県南越前町)の「関係人口」への取組
「関係人口」の取組の実例は全国各地に色々あると思います。
ここでは僕が住む福井県南越前町の取組について少し説明しつつ、実際にこんなことに繋がったという例を紹介します。
今回紹介するのは、地域おこし協力隊としても大きな関わりがある「流動創生」と「地域まるっと体感宿「玉村屋」です。
流動創生
「流動創生」とは地域おこし協力隊のOGが町に提案し、地方創生の一環として始まった事業です。
今でこそ「多拠点居住」や「関係人口」というワードはよく見かけますが、これらが流行る前の2015年からこの事業は始まっています。
HPでは下記のように説明されています。
「流動創生」とは?
風を読み、季節を渡る鳥のように、
もっと自由に、流動的に。
「流動創生」は、場所や組織に縛られない、多様で新しい働き方・暮らし方を提案するウェブメディアです。
全国各地を巡ってスキルを習得しながら、流動的なライフスタイルを模索する「Round Trip」。
町内にて、「風の人」と「土の人」のギブアンドテイク構築を学ぶ合宿企画「Stop Over」。
などをメインに「多拠点居住」や「関係人口」をテーマに都内でイベントをしたりと、流動的なライフスタイルを推進する事業とでも言えばいいですかね。
2017年の記事にはなりますが、このgreenzの記事にまとまっているので、もし良かったらご覧ください。
またあのソーシャル&エコマガジン「ソトコト」の2019年3月号「続・関係人口入門」特集に大々的に掲載されるなど、今注目され始めている取組なのです。
地域まるっと体感宿「玉村屋」(旧玉村邸活用プロジェクト)
地域まるっと体感宿「玉村屋」とは地域おこし協力隊である中谷隊員(2019年3月末まで)が空き家だった民家を改装して2019年2月に開業した宿屋です。
中谷隊員がこの活動にかける想いについては「【インタビュー記事23】日本の魅力をつくる人。誰かをハッピーにし、世界をハッピーにする - 暮らしと旅と、私の記録。」の取材記事をご覧ください。
この宿屋に向けた取組は以下のように始まりました。
ここの宿の特長は「リアルな地域を体感できること」です。
宿としてのオープンは2019年2月ですが、体感プログラムの「Local-Plactis(ローカルプラクティス)」はこれまでに宿のモニタープランとして2年程前から始まりました。
「つるし柿作り」や「花ハス収穫」、「酒蔵の杜氏体験」など観光として用意されている体験ではなく、実際の制作過程や出荷作業など本当にリアルな作業を「体感」できます。
その他にも「地域のお神輿担ぎ」や「餅つき&年越しそば打ち」など暮らしをリアルに「体感」できるプログラムもあったりします。
この宿の場合は「関係人口」を表に出してやっているわけではありません。
ただ、この宿に訪れた方がその後南越前町と関わってもらえるようになったりと自然に「関係人口を生み出す」役割を果てしているのです。
取組通じてどうなった?
実際にこの2つの取組を通じてどれぐらいの人が町を訪れ、どんな関係人口が生まれたのか。
実際に南越前町を訪れてくれた人(※町内で参加された方は除く)は以下の通りです。
合計400名以上の方が南越前町を訪れてくれているのです。
これだけの人が「福井県南越前町」のことを知ってくれたのです。
全国的に見ればまだまだ南越前町の認知度は低いので、この実績は数字以上に意味があると思っています。
またさらに訪れた人とその後こんな風に関わりを持つことができました。
画像出典元:流動創生・地域まるっと体感宿「玉村屋」Facebook
さらに
この3件が多いのか少ないのかはわかりません。
ただ少なくとも”0”が”1”になっているとは思っています。
この「訪問者」、「移住相談」に繋がっただけでもスゴイことだと思いませんか?
なぜその地域(福井県南越前町)に来てもらえるのか
では、なぜこうやってたくさんの人がその地域(福井県南越前町)を訪れてくれるのか。
パッと思いつくのはこんな感じです。
他にも色々ありますが、単純に「都市部にはない魅力があるから」だと思います。
例として南越前町の地域おこし協力隊に「町の魅力」を聞いてみました。
都市部にはない魅力が南越前町にもたくさんあることがわかってもらえたと思います。
ただ…
同じような魅力の市町村はたくさんある
のです。
隣町と何が違うのか、日本海側の地域や人口が同じ程度の地域とどこが違うのかと聞かれれば、そこまで大きな違いはないでしょう。
多少の違いはあろうとも、どこも「自然が多くて、食べ物がおいしくて、人が優しい」という感想があるでしょう。
じゃあ世間的に人が集まる「人気移住地域」と人が集まらない地域とは何が違うのでしょうか。
人気移住地域との違い
もちろん環境的な違いはあるとは思いますが、圧倒的に違う部分があります。
そうです。
情報発信量の違いです。
同じような「魅力」がある中で、その情報が移住希望者に届いているかどうかが重要。
つまり、これから移住者を増やしたいなら「魅力・楽しさを発信する人が必要」なのです。
「発信」の仕方はどうやって?
魅力・楽しさを発信をしていく必要があるわけですが、ここでいう「発信」とは2種類あります。
「地域内(関係者)」の発信と「地域外(一般人)」の発信です。
信頼性が高いのは「地域外(一般人)」の発信です。
例えば、みなさんが外食をする時にそのお店の紹介文ではなく、口コミを見るように「一般人」の意見の方が信頼性って高くないですか?
これはその地域の評価においても同様で、誰かが「行ってよかった」「こんな場所だった」とSNS上に書いてあった方が良さそうに見えるはずです。
地域内からの発信っていくら本当のことでも「悪いことは書かず良いことばかり、むしろ少し盛ってるぐらいの表現なんでしょ?」と低い評価になりがちです。
だからこそ「一般人の評価(口コミ)」を増やしていく必要があるのです。
一般の人の評価(=口コミ)を増やすには?
一般人の評価を増やす方法は?というよりまず評価してもらうには
「知る」
「見る」
「体験」
をしてもらう。
つまり、関わってもらうこと(≒関係人口)が必要です。
地域コーディネーターの必要性
関わってもらうこと(≒関係人口)が必要ですが、もちろんただ待っているだけでは誰も関わってくれません。
そこで必要になってくるのが地域の魅力・楽しさを伝える(案内する)「地域コーディネーター」の存在です。
ただその地域を訪れただけでは、観光と変わりませんし「移住」に必要な魅力は伝わりません。
どの市町村にもあるその「魅力・楽しさ」を伝える(案内できる)人がいて初めて「人」に伝わるのです。
だからこそこの「地域コーディネーター」の人材育成を図っていく必要が、「関係人口」を増やす上でも欠かせないのです。
今回例に挙げている南越前町で言うと、自然とその役割を担っているのが「流動創生」と「地域まるっと体感宿『玉村屋』」だと考えています。
カンタが考える理想の移住の流れ
ここまで移住者を増やすためには、なぜ「関係人口」を増やさなくてはいけないかについて述べてきました。
実際に僕は「移住」までの流れがこうなれば理想だと思っています。
「関係人口」が増えたその先にやっと僕がしているような、移住支援・相談を受ける人たちが必要になってくるのです。
移住支援・相談の体制を整えるだけでは、移住者が増える確率は低いはずです。
「関係人口」という地域に関わってくれる人を増やし、まずは”その地域”に興味を持ってもらう必要があるのです。
まとめ
色々なことをお話してきましたが、今回の「地方の人口減少対策における「関係人口」の必要性」についてまとめます。
移住者を増やすには「関係人口」が必要です。
関係人口を増やすべき「理由」
似たような魅力を持つ市町村がたくさんある中で、情報発信の量が人気移住地との差となっています。
だからこそ地域と関わってもらう人(≒関係人口)を増やし、その地域の魅力・楽しさを知ってもらって一般人の評価(口コミ)を増やす必要があります。
地域内(関係者)だけでなく、地域外(一般人)からの発信もしていくことで、地域の評価や認知度もあがっていくのです。
また関わってもらうことで初めて「人」の良さや「環境」の良さを知ってもらえ、「移住」という判断にも繋がってくるので「関係人口」を増やしていくべきなのです。
関係人口を増やすために「必要なこと」
関わってもらう(≒関係人口)を増やすには、やりたいこと(夢)が実現できる環境を整えるべきです。
例えば静かなアトリエが欲しい芸術家の人のために、空き家を活用した長期滞在可能なレンタルアトリエを作ってみたり「自分の住む場所ではできないけど、その地域ならできる。」と感じてもらえるような環境作りが必要です。
また、「環境」を整えるだけでなく、その魅力や楽しさを伝える(案内する)「地域コーディネーター」的な存在が不可欠となります。
やはり自分自身で訪れるだけでは気づけない、地域の魅力がどこの地域でもあるはずです。
ただ、その魅力を知ってもらわなければ「関係人口」、さらにその先の「移住」には繋がっていきません。
だからこそ地域の魅力を伝える「地域コーディネーター」の存在が重要で、その人材を育成をしていくことが必要なのです。
さいごに
長い文章となりましたが、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
「関係人口」というワードは便利な言葉であちこちに使われており、その目的がハッキリしてないことも多々あります。
この記事を読んで「関係人口」の必要性を改めて考える機会になったら嬉しい限りです。
またどんな取組でもそうですが、特に「関係人口」のような地域外の人を絡めていく取組には地域住民の協力が必要不可欠だと思っています。
一方だけが盛り上がって、進めることがないようにしていきましょう。
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